アイ・ドール

「シフォンさん、もういいでしょう――皆さん、申し訳ありませんでした――――」


 マネージャーがシフォンとスタッフの間に入り、シフォンの両肩を掴み自らの陣地へ戻そうとする。


「るっせぇんだよっバカマネージャーがっ――」


 彼を突飛ばすシフォン――机に体を打ちつける鈍い衝撃音とともに、崩れ落ちるマネージャー。

 シフォン側のスタッフが、「大丈夫ですか」と声をかけ、苦悶の表情のマネージャーを抱き起こす――。


「馬鹿馬鹿しい――」

 シフォン側で響く声。


 スタイリストだろうか、衣装を持つ手に力が込められ、その眼はシフォンを哀れんでさえいる――シフォンに意見するなど、相当な覚悟なのだろう――。



「この野郎、ワタシに楯突くなんざ、100億年早いんだよっ――」


「本当に馬鹿――もう辞めます――」


 シフォンを鼻で笑い、衣装を床に投げ捨てマネージャーに頭を下げ、女性スタイリストはスタジオを出てゆく――。


「おおぅ、辞めろ辞めろっ――いつもしょうもない衣装ばっかり持ってきやがって――センスねぇっつうのバカがっ、お前の代わりなんざ幾らでもいるんだよっ――」

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