アイ・ドール

 すぐに効果は現れた――――明子の顔色は、赤黒く変色して鬼の形相となり、私を睨む――。




「うおおおぉ――――」


 獣の雄叫びか、シフォンなる者の最後の呻きなのか、明子の体内の邪悪な存在は低く、地を這う様な声を発し、やがて彼女は気を失った――――。




「明子っ――――」

 シフォンの雄叫びに驚いたマネージャーが、分厚く重いスタジオのドアを蹴破り、私達に駆け寄る――。


「明子、明子っ――」


 私に抱かれた明子に、膝を突き叫び終えると、不安な眼差しで私を見るマネージャー。




「シフォンは消えたわ――――」


「あぁ――――」


 脱力感と喜びの混ざった声と、安堵の表情でマネージャーは私から明子を奪い、抱き締めた――。



「んんぅ――――」

 明子が意識を取り戻す――。


「明子――――」

「ヒロ君――――」


「ごめんね――――」

 涙ながらに明子は、これまでの「非道」を詫びた――。


 明子と彼の間では、「ごめんね」という簡素な謝罪で通じる魂と魂の回廊があるのだろう――。


 出逢った時から、互いを愛していたのかもしれない――。

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