アイ・ドール

 人間よりも、寧ろ人間らしい――――アイドール達を見ていると、ますます私達は偽人化して、「汚れてゆく」と感じる――。




 懸命に歌い、踊り、笑顔を振りまいて忠実にアイドルである事、「人間」である事を全うする彼女達――――自らに薄い膜を纏い、家族や愛する者に対しても無関心を装い、己を守る。過剰な程に、これからも「進化」し続けようとする文明社会を貪り、人を欺き、陥れ、偽りの心と愛で、幸せに辿り着けない魂を埋める――――私達――人間――――。



 一体どちらが存在する事を、「許される」のだろうか――。






「自ら滅びの路を選択したんじゃないかな――――あくまで仮説だけど――」



「何が――――」



「この地球上には舞ちゃん達に至るまで、多様な文明が繁栄しては衰退、消滅してきた――その繰り返しによって今がある。良い悪いは別にしてね――――その事実を踏まえ、ちょっと考えたんだけど、行き着く所まで繁栄を極めた、とある文明の人々は、これからの行く末に不安、恐れ、そして、絶望を抱き、自らの死をもって自らの文明を消滅させたのではないかと考えたんだけど――どう思う――――」

< 305 / 410 >

この作品をシェア

pagetop