アイ・ドール

「何かを残したいものなのよ――――次の世代へと、想い、記憶、命を繋げてゆく。人間に限った営みではないもの――――その法則に則るなら、礼子さんの狂気も正しいのよ。ただ、後に繋がる命が、偽人ではなく、純粋な人間に似せたアイドールに変わるだけ――――それだけの事。それに、何も残さないならミネルヴァ、あなたの存在意義もなくなるでしょう――」


「ドキッ、痛いとこを突くなぁ――――舞ちゃんは――」


「前にミネルヴァが言っていたでしょ――――アイドール達は墓標だって。清らかな心と魂を纏った、人間の姿の生きた墓標――――歌い、踊り、笑っているアイドール達を見ていると、私達の様に汚れて欲しくないと思うもの――――」


「舞ちゃんも、わかってきたねぇ――――死という現象に囚われ過ぎなのかな、人間って――死後の世界――――いろんな宗教で微妙に定義は異なるけど、誰もその世界を体感して現世に戻り、万人に納得し得る確たる証拠を提示した人間っていないよね――それぞれの宗教の神がいるじゃないかって言うけど、それも遠い遠い昔話みたいなものだしね。それじゃぁ、比較的現代に存在する神って何だろうね――――」

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