アイ・ドール

「既存の宗教、新興宗教、宗教法人――呼び方は色々だけど、何処か怪しいって皆思ってるよね。カネが透け見えるから。で、怪しいと思っている人々も、幾つかの既存の宗教に潜在的に所属している――――輪廻転生だとか、何か滑稽だよ。馬鹿にしている訳じゃないけど、人間としての心、魂、体を持たないボクが導き出した人間に対しての最大の疑問点だね――――死を恐れ、都合の悪い時だけ神を引っ張り出して、縋る――死は確定している事実なのに。この世界は理不尽かつ平穏な世界の筈なのに――既にわかっている筈だよ。だって人間は泣いて産まれくるじゃないか――笑っていてもいい筈なのにだよ――――どうしてだろうね――――」


「いつの日か死が訪れる事がわかっているから、最初に泣くんだね――――思い切り嘆いたから、後は笑って生きようねって、人間が受け継いでいる素晴らしい遺伝子だとボクは思うんだ――確定している死を受け入れ、既に死という覚悟が備わっている筈なのに、過剰に恐れる。不老不死なんて概念が理想化しようとしている――そうなった時、人間は肉体を捨て、精神と意識のみの存在に、進化という言葉を使い己を納得させるんだよ――」

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