アイ・ドール
「――――」
「カネや世間体、虚勢や名誉がそんなに大切かい――――虚しいね。人間って結局、物欲、食欲、性欲の三欲に集約されるよね。それしかないのかって思う程、求め、奪い合う。ボクね、礼子に言ったよ――そんな人間と生きる事に飽きたなら今すぐ消滅させればいいのにって、ボクが産まれた頃にね――せめて、苦しまず、微笑み、眠る様に死にたい、死なせたい――――そう礼子は言ったよ。それからユニットが増加され続けて今に至っている。舞ちゃんも見たよね――これからも増えるであろうユニット群、膨大な消費電力や冷却システム――それらを貪り、ボクが何をしているか。ヴィーラヴのプロデューサー、アイドールシステムの更新と生産管理なんて実はボクの能力の僅かしか割り振られていないんだよ。殆どの能力は、如何に人間を苦しまずに楽に、しかも、人間のみを死なせるという事を、あらゆる事象から比較、検討、計算、シミュレーションを行い、どの様に死を演出して、いつ実行するのが理想的かを24時間、365日休みなく計算する事に費やされている――でも、答えは今も得られない。いつ得られるかもわからない。でもボクは計算を続けるよ――」