アイ・ドール
だだの、男と女の濃密な日常の営みなのだ――――他に何もいらない――――。
私達は事前に、シフォン陣営が記者会見を行うとの情報を得ていた――――恐らく偽人達はこう語るのだろう――。
「皆様に、生きる勇気と希望を、美しい歌声とメロディーで送り届けてまいりましたシフォンは、より皆様に共感して頂く為に、ここに長期休養を宣言致します――――休養中も、自己を磨き、心を美化し、復帰した暁には、更に美しい歌声とシフォンの世界観で皆様を魅了してまいりたいと思います――――」
彼らに、その様な言葉を紡ぐ資格などない――。
いっそ、楽曲は全てゴーストライターが制作して、シフォンはだだ、歌っているだけ――――綺麗な容姿の裏側は、醜い性格が取り憑いて、我々もファンも、ただのカネと名声を得る為の道具としか思っていません――と、全て白日の下に晒せばいい――――。
だが、偽人らは先の言葉でまたもシフォンを崇拝する偽人達を欺こうと画策する――。
なら――私が偽人の企みを葬り去る演出を施すまで――――。
橋本 明子はもう、シフォンではないのだから――――。