アイ・ドール
シフォン陣営の会見当日の朝に、ヴィーラヴに関する緊急記者会見を同日同時刻に、ヴィーナスタワーにて行うとメディアにリリースした――。
新曲の同時リリースの件の、ささやかなお返し――。
さて――各メディアはどちらに注目するのか――今、この世界の頂点に君臨しているのは、ヴィーラヴかシフォンか――――。
ヴィーナスタワーのメディアミックスフロアはすし詰め状態だった――国営、民放各局、新聞社、雑誌、ネット事業者、芸能リポーターらの人体から放出される熱により、エアコンがフル稼動するも、むせ返る様な暑さになっている――。
決着はついた――。
今頃、数少ない記者らを前にシフォンの休養を平静さを装い、伝えている偽人達の渋い心の内が見て取れる様だった――これでいい――。
「ありがとう――――」
声がした――。
「どう致しまして――」
心の中で返した――。
きっと、何処か遠い場所で橋本 明子が、空を、空気を媒体に、私の意識にそう語りかけているのだ――と感じた――。
幸せに生きるがいい――。
僅かな歳月だったとしても――。