アイ・ドール

 シフォンを失った偽人達がどうあがこうが、いずれドロシーエンタープライズに吸収される――。



 またも望んでもいないのに、私は執行役員の一人に名を連ねていた――。




「買収でもしましょうか――――」



 この「茶番」の数日前に開かれた役員会議において、「何か発言を――」と他の役員達の眼が私に向けられた時、切羽詰まって苦し紛れに発言、提案した――。


 一笑に伏されると思っていたが、既に政治的根回しは済んでいる様で、礼子さんは私の「思いつき」を了承した――そう遠くない日に、買収は完了するだろう――。



 シフォンは永遠に封印される――――。


 ドロシーエンタープライズは更に勢力を拡大し、得られた果実は、私達が消滅した世界で生きる多くのアイドール達の命の糧となる――。






「万希子さんは、私達の悩み事を嫌な顔一つ見せずに、いつも真剣に聞いてくれました――その事が、万希子さんを苦しめていたんじゃないかって――――私達、甘えていたんです。万希子さんの優し――――」


 涙を流し、言葉に詰まってしまう詩織――。



 機械の眼が、涙に焦点を合わせる――。

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