アイ・ドール
「真面目だから――万希子さん――――」
伏せた詩織の代わりに、アリスが口を開いた――。
「私達の支えなんです――歌や踊りとか、上手くいかない時も、頑張ろうって色々助言してくれて優しく励ましてくれた――――万希子さんだって悩んでいる筈なのに、自分の事はそっちのけで――――」
キャロルアンがアリスに続くと他のメンバーも、言葉を噛み砕く様に頷き、その後全員が押し黙ってしまう――――。
「記者の皆さんも、テレビやネットで見ている皆さんも、早く万希子さんが治るように祈って下さいっ――――」
くすんだ空気を弾く勢いで、あの眼と声色を使い、葵は一つ一つのカメラを嘗め見つめ、言った――――甘いアニメ声と艶めかしい躰で、罠をしかける様に――――。
絡め採られる様に数名の記者は、自らの仕事を放棄し、葵という女にやられ、にんまりと表情がだらしなく緩んでいる――。
筋書き通り――――。
自分の想い、悩みを後回しにしてメンバーを気遣い、悩み事を聞き、皆のまとめ役に徹する――――前に出る事なく一歩後ろから慎ましやかに振る舞う万希子さん――。