アイ・ドール
涙を振り払い、悲しみの感情を腹の中に閉じ込め、詩織は声を絞り出し、頭を下げた――。
「ありがとうございました――――」
他のメンバー全員が立ち上がり、詩織に続いた――――。
メディアの猥雑な「光」が、夥しくアイドール達に放たれ続ける――――。
完璧なる――――勝利――――。
聞けば、シフォン陣営の会見は閑散としていたらしい――――。
そう――――これでいい――。
記者会見の翌日、万希子さんの後を追う様にアイドール達は第4世代目になるべく、旅立った――。
しばしのお別れ――――しかし、半日もすれば新しく産まれ替わったアイドールが私の前に姿を現し、再び私の愛を受け入れる――沸き上がる興奮を抑えられない。早く、進化したアイドール達に逢いたい――――私の細胞が、血が、筋肉が過剰な熱を発する――。
それにしても――人間とは不思議なものだ――。
あの会見以降、ヴィーラヴメンバーの中では最もセールスが良くなかった筈の万希子さん関連のグッズ、写真集、ブルーレイなどが突如、堰を切った様に売れ始める――――。