アイ・ドール

 葵やアリス、モカ、モコ、キャロルアンがどうしても目立つ為に、地味でおとなしい印象としてのヴィーラヴ内での万希子さんだが、美しく艶やか長い髪、透き通る白い肌、澄んだ瞳にあの「涙」を含ませ、上品で細身の躰――――あくまで、ヴィーラヴにおいての地味子としての存在だが、他のプロダクションから正しく売り出せば、万希子さんのいないヴィーラヴともソロで互角に闘える素質は、十二分に備えている――人気の出る素地はあったのだ――――。



 今回の「茶番」でようやく万希子さんの魅力と人間の良さが広く認められ、優しくしなやかで綺麗なお姉さん――という、ヴィーラヴ内や世間においてのポジションを確立、不動のものとしてゆく――――。




 この「現象」は、何なのか――――。




 まだ人間にも、心の何処かに人を慈しむ純粋な魂の欠片が残っているからなのか――――それとも、他人のちょっとした不幸に、「それ見た事か――」と溜飲を下げ得られる偽りの同情心からの行為か――――或いは、盲目的に世間の流行にただ流されている故の、無意識的な惰性行為なのか――――。




 恐らくは――――後者なのだろう――。

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