アイ・ドール

 いつの間にか床に落としていた視線を、際限なく広がる都会の風景に戻し、眺める――。



 やがて、焦点と意識が揺らぎ始め、私と心の奥底に潜み続けているもう一人の私との対話が進行してゆく――――。




「私は、どうすればいいの――」

『誘いを受け入れるべきよ――』


「本当にできるの――私に――」

『また、扉の前で考え込む――悪い癖ね――』

「私だって、このままで良いなんて思わない――でも――」

『じゃあ、断わるの――後ろに戻って空虚な日々を続けるの――』


「――――」


『前に進むしかないのよ――扉を開けて――』


「でも――――」


『そう――結局は逃げるのね。本当の自分の心からも――』


「くっ――」

『ふふっ、そうね。だから、あの男も逃げたのね――弱いあなたから――』


「違うわ――そんな筈――ない」

『何が違うの――全てあなたが望んだ結果が今の自分の姿――可哀想に――』


「やめて――そんな事言わないで――」


『なら、決めなさい。あなたにしか決められないのよ――あなた自身、どうなりたいのか、どう生きたいのか――』



「――――」

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