アイ・ドール
「無理でしょうね――――」
私の心に語りかけてくる――。
誰なのか――――私にはわかっている――。
「そうかもしれないわね――――」
語りかけてきた相手――――月に私は応えた――。
「だから皆、いなくなるのよ――――あなたが見下ろしている世界から――――」
月はずっと見ていたのだ――私達が存在する遥か以前から、天空に輝き、この惑星の変容を数十億年、見続けてきた――――。
月からは、私達「人間」という「現象」は、どの様に見えるのか――――。
地球という惑星にとって、最も優れて理解ある知的なパートナーだったのか――或いは、いつしか驕り高ぶり、この世界を支配していると思い込んでいる無知で狡猾な存在であるのか――――。
どちらなのか――――。
どう考えても、前向きな解を思考できない――。
所詮――私達という存在は一瞬、小さく咲いた「あだ花」なのだろう――。
何一つ、美しく、誇れるものを遺せない現代文明に浸り、生きている私達の世界――――。
「もう、楽になりなさい――」
月は言った――。