アイ・ドール
「ちっ――」彼女達への憎しみの感情か、それとも私自身に対しての苛立ちからなのかその後、私は舌打ちを繰り返していた――。
どの位、時間が過ぎたのだろう。
彼女達はとっくに画面からいなくなっていた。辛いけれど仕事上、彼女達が出演する番組は見ておこうと決めてはいた。
彼女達との関係が、私が社会と繋がっている唯一の接点なのだから。
故に、彼女達以外の何が流行して、どんな事件が起き、株価が上昇、下落しただのと、世間で起こっている出来事なんかに興味などなかった――。
ゆっくりとマットレスから身を起こした先に「まだ」飾ってある1枚の写真。何処かにあるようで、何処にも存在し得ないような不思議な世界の風景写真。
でも、今も大事に飾り立てている。
何故、どうして私から彼は消え去ってしまったのだろう――。
写真家としての将来も約束された豊かな才能と環境。彼と共に全てが順調に進んでゆく筈だったのに――。
彼が消え去る1週間前から、私の幸福のシナリオは歪み始めた。
健気に、甲斐甲斐しく愛情を注ぎ、支えた日々。
私の一体、何がいけなかったのだろう――――。