アイ・ドール

 その潤いも、大学に進学してすぐに渇いてしまう。

 無意識に望んでいたのかもしれない。一人でいる事を――。

 私の雰囲気がそうさせる要因なのか。故に、大学において私に取り巻いてくる者達は、私の背後に見え隠れする「カネ」の存在に友情を見いだし、恩恵を得られないとわかると、去ってゆく。


 私は、大学で何をして、どんな人生を歩みたいのだろう――「焦り」を感じたのは、大学に進学して既に2年が経過した時だった――そこから必死で、一緒に講義を受け、食事を共にする「友人」を何人かは創り得る事はできた――心の何処かで嘘をつき、自分を変えようとして。

 何の目的もなく、無意味な毎日を送っている責任は、私自身にある。よく考えれば、有利な環境に私は立っている――何もかも恵まれている。


 一歩づつ、自分の進む道を定めてゆけば良い。


 が、3年目を迎えた私は一体、何がしたいのか。

 数少ない「仲間」達が、自分の人生をほぼ決定づける就職戦線へと踏み出し始めている――。


 天国か地獄か――

 楽園期か氷河期か――


 予測不可能な不気味な経済の「流れ」によって、彼らの一生が決まる。

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