マイティガード
「…じ、女性を一人で行かせるわけにはいきません…!
バネッサさん、私も行きます!」
マドック刑事のシルエットが立ち上がった。
そして遥か前を歩くバネッサのシルエットを追って、アネリ達の傍を離れていく。
一人より二人のほうが安全だ。
警護が手薄になってしまったのは予想外だったが。
アネリは抱き着いていた腕を解き、ぼんやり浮かび上がるパーシバルの目を見つめる。
「有毒ガスって本当に?」
パーシバルは小さな体の代わりに彼女の手を握り、自分はつねにここにいることを知らしめる。
「はい。室内の通風孔から徐々に部屋へ流れ始めていました。
遅効性のようなので、少量吸い込んだだけならば効果はすぐには現れません。
そもそもお嬢様はガスをまったく吸い込んでいらっしゃらないはずですよ。」
そうか、あの時。
荒っぽくアネリの呼吸を封じたあの時、パーシバルは誰よりも早くガスに気付いていたのだ。
自分が吸い込んだことで、その微かな違和感を敏感に察知して。