マイティガード


しかしアネリは与えられたものを受け入れて黙々と読み始める。
つまらなそうな様子でも、面白そうな様子でもない。


「…アネリさんはいつもそういう本を読んでいるんですか?」


マドック刑事が気になったことを素直に訊ねた。



アネリは文字を目で追いながら答える。


「ええ。別荘にもお屋敷にも、こういう本しかないから。

どれもね、使用人達が勧めてきたから読んでるの。為(ため)になるんですって。」


為にはなるだろう。
だがそればかりで表現豊かに育てるだろうか。
もっと絵本や詩、夢のある物語も読まないと。

マドック刑事がその旨を言うと、アネリはずいぶん冷めた口調でこう返してきた。



「嫌いなの。
絵本も、夢のある話も。

それ以外の本が読みたいわって頼んだら、こういう本ばっかり与えられたというわけ。」



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