マイティガード


「パーシバル、怪我は大丈夫?」


アネリの指先が、パーシバルの額の風穴にそっと触れる。

傷口から滴る血はまだその流れを衰えさせない。


が、彼は痛みを覚えるどころか心から幸せを感じている顔で。


「…はい、お嬢様。
申し上げましたでしょう?
私はこの程度の怪我では死にません。決して。

この赤い液体の正体も、人間の血とはまったく異なります。
ただの“潤滑油”ですので。」


空気に触れることで鮮やかな赤に変色する特別な潤滑油。
パーシバルの外見を少しでも人間に近づけるための開発者達の意図がうかがえる。



アネリは安堵の溜め息をついてから、


「良かった………。

打ち合わせよりちょっと遅かったわね。」


マドックを更に驚かせる作戦の内容を語り始める。


「護衛のパーシバルが死んだと思わせれば、犯人は必ずあたしを連れ出そうとするはず。

そこであたしも怯えたふりをすれば、犯人は間違いなくあたしを殺すから。

結果、真犯人のあなたがまんまと引っ掛かってくれて嬉しいわ。ありがとう。」


< 306 / 352 >

この作品をシェア

pagetop