マイティガード


途中、立てずに横たわるバネッサにちらっと目を向けた。


「ウぅッ……ぐぅウ…!!」


獣の威嚇のような唸り。ありありと感じられる敵対心も、今までの彼女とはまるで別人だ。

両脚を撃ち抜かれているのに泣き叫びもしない。
“人間ではない。”そう判断するには充分。


「…なるほど……。彼女もその、マイティガードとかいう製品なんですね…。」



「はい。
バネッサは私のすぐ後に造られたシリーズなので、…不本意ながら私の兄妹(きょうだい)にあたります。

ただメイドとして起用されたのはほんの2年前なので、まだ感情面の成長が見られませんが。」


だからバネッサはつねに無表情だった。

要人(アネリ)を傷つけるものに対して反撃する。唯一与えられていた命令に従っているからこそ、彼女は今“怒り”を見せている。


―――だからこそ私は驚いたのです。根本は機械であるはずの私自身は、なぜ……。


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