マイティガード
特にする用事もないので、アネリは髪を下ろしたまま医務室へ向かうことにした。
毎日の三つ編みで癖がついたウェーブが、彼女の小さな歩幅に合わせてゆらゆら揺れる。
丈の長いワンピースもよく似合っており、その姿は仮に一国のお姫様と言われてもまったく違和感がない。
途中すれ違った数人の使用人は、いつもと雰囲気の違うアネリを珍しそうに見つめた。
お節介な使用人の一人が、
「お結いしましょうか?」
と訊ねるが、アネリはツンと鼻先を使用人とは反対のほうに向けてしまう。
いくら見てくれが可憐になっても中身は相変わらずだ…と使用人は呆れるのだが、もちろんそれを口にする勇気はない。