惣。
「これ…あの時の傷?」
穂群の黒髪を除けて肩を撫でる。

「ああ…」
ストローから口を離さずに答える。

「…やっぱり…どの時代でも自分を傷付けて来たのか?」

「結果的には…しかし…どの世も生き難かったが…今が一番良い…」

「それって…」
(それって…俺が居るからか?)
そう聞きかけて惣は言葉を止めた。

「どうした?」

「いや…それって…大好きなフラペチーノがあるから…とか?」
生クリームと格闘する穂群に笑いかける。

「あ…違う…違うが…それでも良い…」
否定するが穂群は照れた。

「なんだ?それ…」

「惣が幼き頃、良く同じ病になっておったが…意外に辛い物なのだな…」

「うん…でも…いつも忙しいじいちゃんも…兄ちゃんも…穂群も熱の時だけは優しくて構ってくれたからな…俺には良い思い出しかないよ」

「そうか…確かにそうかも知れぬな…」

「うん…それ飲んだら寝ろよ?」
惣は穂群の甘い唇を奪い、穂群の滅多に見れない慌てた姿を楽しむ。

「分かったか?」

「風邪は感染するのであろう?まだ舞台も残っておるのに…」

「そうだね…まぁ…その時はまた昔みたいに穂群に看病して貰うよ…何かあったら呼べよ?」

「分かった…」
閉められたドアに向かい穂群は返事をした。
< 43 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop