惣。
(あっ…穂群…良かった…ちゃんと会えて)
その日の夜、枝辰と穂群は再び夢での疎通を試みた。
(枝辰…済まぬな…お前しか受け取れる者が居らぬ故…)
(穂群は大丈夫?痛い事とかされてない?)
小さな眉間に皺を寄せて穂群を見上げる。
(ん?それは無い…手厚くもてなされて居る…叔父上が行っただろう?)
(うん…お父さんも皆、言われた通り普通にしてたよ…お姉ちゃん…ううん…叔母ちゃまは優しくしてくれたよ)
(そうか…また、里要に伝えてくれぬか
?)
穂群は再び枝辰に託す。
(分かったよ…穂群…)
(どうした?)
実体では無いお互いだが、枝辰は穂群の腰の辺りに抱きついて来た。
(…いつ帰って来る?)
(まだ分からぬが…必ず帰るからな…)
そう言うと、枝辰の姿は消えた。
深い眠りに入ったのだろう。
「今…宜しいですか?」
窓辺の文机から外を眺めていた穂群が、そのままの状態で答える。
「可恵殿か?どうぞ…」
「お茶にしませんか?」
「そうか…ありがとう。主は留守か?」
火鉢の鉄瓶から湯を注ぐ可恵にやっと目を向ける。
「…はい…急遽、代役が決まったとかで…」
差し出された小皿には塩饅頭が乗っている。
「これは…先代の好物…」
「昨日のお返しの品に頂いたんですが…」
思い出した様に可恵が笑う。
「どうした?」
不思議そうに穂群が見つめる。
「辰巳さんが、穂群様の好物でもあるか
ら…って…こっそり二箱持たせてくれたんです」
「辰巳がか?」
「はい…お弟子さん方と受付をされてい
ました…しっかりと役目を果たされていましたが思わぬ子供らしさで…」
自分にもまだ幼さが残る可恵が目を細めて笑う。
「辰巳らしいな…弟はどうだった?」
可恵が淹れてくれた茶に手を伸ばしながら枝辰の様子も聞く。
「それが…(穂群に優しくしてくれてるから好き)と言って下さって走り去りました…どうして私が穂群様のお世話をさせて頂いてるのをご存知なのでしょうか?」
不思議そうだが、嬉しそうに可恵が言う。
(枝辰め!)
そう思いながらも穂群は答える。
「そうか?夢でも見たのかの…式の間二人はどうであった?」
「落ち着いていましたよ…枝辰さんは欠
伸を我慢されたりしてましたが…最後までご立派でした」