惣。

「大役が控えてるのか?」
秋季祭の台本と一緒に渡された菊花祭の台本を都織が開く。

菊花祭は同じく、この時期に開催される若手役者達が大御所達を差し置き、主役を務める公演の事だ。

この公演の出来により、襲名が決まる事もある。
俗に言う(名門出)では無い者達にもチャンスが与えられる。

「土蜘蛛、身替座禅…浄瑠璃か…」

「惣が頼光(らいこう)久々だな相手役になるの…俺は女形自体久々だ。後は…日替わりの外郎売りの五郎…競わせたいのか?」

都織は頼光の侍女、胡蝶として前半に舞う。
「顔を合わすのは最初だけだな」
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