危険なスキ ~不良くんのお気に入り~
西園寺くんはこちらに向かってくると、ソファの後ろにある本に手を伸ばした。
必然的に、私の前に立つ事になって……。
目が合った。
それも、すごく間近で。
びっくりして思わず二人で目を離せないでいたけれど、先に私が視線をそらしてうつむいた。
「これ、読んでみれば」
言葉少なくそう言って、西園寺くんは私に本を手渡した。
「う、うん。ありがとう」
私が受け取ると、沈黙が流れた。
西園寺くんはその場から動かない。
ドキドキと、心音が高まってゆく。
さらりと、彼の手が私の髪を撫でた。
動けなくなった私はただ西園寺くんを見上げるしか出来ない。
手は髪から頬に移動してきて、温もりが伝わる。
ゆっくりと西園寺くんの顔が近付いてくるのを見ていられなくなって、途中でギュッと目を閉じた。
離れた気配を感じて目を開けた時には、少し離れた位置に西園寺くんの背中があった。
「読んだら感想聞かせろよ?」
背を向けたままそう言われて、私は動揺を押し殺しながら頷いた。
「う、うん」