危険なスキ ~不良くんのお気に入り~

3.お正月とおみくじ



 1月1日の朝、私は家の前に立っていた。何故かと言うと西園寺くんに初詣に誘われたから。

行き先はうちの近所の神社。
小さな神社なので地元の人くらいしか来ないので、なかなかの穴場。
だから私から場所を提案したら、西園寺くんがそこがいいって言ってくれて!

昨日の夜から、私は楽しみでそわそわしていた。そしたらお母さんが、

「遥!お着物着ましょ!」

って張り切っちゃって……。
早朝からみっちり時間をかけて着せられて、すでにぐったり……。

着物なんて、年に一回くらいしか着ない。
ぞうりで歩くのも自信ないけど、近所なら大丈夫かな?

そんなこんなでドキドキ。

「寺島!」

聞き間違える事のない声に、私は振り向く。
西園寺くんだ。いつもながら、私服かっこいいなぁ。

「寺島さん!」
「お、着物じゃんか!」

夏乃子(かのこ)ちゃんに嘉川(かがわ)くんも一緒に来たんだ!
夏乃子ちゃん、お着物素敵!

「明けましておめでと〜!」

私と夏乃子ちゃんで手を握り合って喜んでいると、不機嫌そうな顔の西園寺くんが割り込んでくる。

「おい、寺島。お前は誰の彼女なんだよ」
「えっ!?」

急に言われた言葉に顔が熱くなる。
『彼女』
うん、私は西園寺くんの彼女……。

「俺より先に夏乃子に言うとかしんじらんねー」
「あっ、ごめん。西園寺くん、明けましておめでとう」

そう言うと、西園寺くんはニッと笑ってみせる。ご機嫌直ったみたい。

「寺島ちゃん、明けましておめでと!」
「うん、嘉川くん明けましておめでとう」

なんて言ってる間に西園寺くんは私の手を握って、さっさと行こうとしてしまう。

「ちょ、ちょっと待って」
「いーから行くぞ」

私がぞうりでパタパタ小走りになっていると、西園寺くんはそれに気付いたのか歩くスピードをゆるめてくれた。

「玲のやつ、ヤキモチだな」
「ホント玲ちゃんったらー」

後ろでくすくす笑い合う嘉川くんと夏乃子ちゃん。
なんだかお似合いの二人だな。
それに心なしか、夏乃子ちゃんの顔がとても嬉しそうに見える。

そんな事を思いながら歩いていると、すぐに神社に着いた。

「はー、こんなとこにホントに神社あったんだ」
「夏乃子も初めて知ったー」
「人も少ないし、寺島の言うとおり穴場だな」
「うん。そうなんだよね」

石畳があって、木々に囲まれた鳥居があって。きれいな空気が、隠れ家っぽい雰囲気の神社。

出店などはないけど、おみくじがあって、絵馬がかけられていて。
小さな頃から、何度も来た神社。
そこに、西園寺くんと詣でる日が来るなんて思いもしなかった。

入ってすぐのところにある手水舎(ちょうずや)でみんなで手を清めて、本殿に向かう。

「せーので入れようぜ」
「りょーかい!」

みんなで合わせてお賽銭を入れて鈴を鳴らすと、それぞれ手を合わせてお願い事をする。

フッと目を開けると、西園寺くんと目があった。どうやらじっと見られていたみたい。

「何、お願いしたんだ?」
「……内緒」
「つまんねぇのー」
「だって、言わないほうが叶うかなって」
「ふーん?じゃあ許してやるか」

どんなときも、俺様な西園寺くん。彼こそ、何をお願いしたんだろう。
自分で内緒にしておきながら、気になるなぁ……。

お願い事の後は、やっぱりおみくじだよね!
おみくじ好きの私はワクワクしてくる。

「寺島、なんか楽しそうだな」
「ふふ、おみくじ好きなんだー!」

楽しみで仕方ない私に、西園寺くんがいたずらっぽく笑ってみせる。
う、これは……何かたくらんでる時の顔だ。

「じゃあ、結果で負けた方が勝った方の言う事聞くことにするか」
「それ乗ったー!」
「夏乃子も!」
「ちょ、お前らには言ってねー!」
「い、いいじゃない。みんなですれば……」

私の言葉に西園寺くんから非難の目線が飛んでくる。うう、だって二人だと何言われるか分かんないんだもん……。

結局、四人でおみくじを引く。

「せーの!」

全員で一斉に結果を確認する。
「大吉!」
「吉!」
「中吉!」
「末吉……」

なんと、私が末吉!
そして大吉は……、

「やっぱもってんな、俺!」

見事に(?)西園寺くん。
ええ……、これって……。

「寺島、覚悟しとけよ?」

う、嘘でしょ……?
焦る私を満足そうに眺めて、西園寺くんは『何にしよっかなー』と呟いている。

参ったな……と思っていると、いつのまにか隣に来た嘉川くんが私に笑いかけた。

「寺島ちゃん、ありがとな」
「えっ?ありがとう?どうして?」
「玲を、過去から助けてくれて、だよ」
「過去……」

それは亜衣(あい)さんの事だろう。西園寺くんを何度も裏切った、彼の初恋の人。
亜衣さんは、今は幸せなんだろうか。

「寺島さんと付き合ってからの玲ちゃん、ホント幸せそうだよ?」
「そ、そうなんだ……?」

後ろからぴょこっと顔を出した夏乃子ちゃんもそういって笑う。

そうなのかな?
西園寺くんは、私といれてよかったと思ってくれてるのかな?

私は……西園寺くんといれて良かったって思ってる。
だから、彼もそう思ってくれてるなら、本当に嬉しい。

「よし!決めた!」

西園寺くんが、最高に楽しそうな顔をした。
ヤバい!絶対、ぜーったい、ヤバい!
私の第六感とやらが、その先の言葉を危険だと感知している。
危険、
危険、
キケン!



でも、そんな危険なあなたが……いつだって最高に―――大好き。






おわり
< 251 / 251 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:18

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

お嬢様は不良さんと恋したい

総文字数/10,358

恋愛(純愛)10ページ

表紙を見る
アイツは私の初彼氏2

総文字数/2,999

恋愛(学園)8ページ

表紙を見る
怪盗は静かな夜に出会う

総文字数/8,376

恋愛(キケン・ダーク)17ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop