スピン☆オフ
抵抗することを諦めた。


全身から力が抜けていく。


「スッゲ~感度。…尚吾に感謝。」


呼吸の荒い男の口から、ボソリと途切れ途切れに聞こえた。


しょうご…?


その名前を聞いた瞬間、抜けたあたしの魂が戻ってきたかのように現実に戻ってきた。



ボンッ!!!!!!



思いっ切り男のみぞ落ちに肘鉄(ひじてつ)を喰らわせた。


「ウホッ!!!!」


見事命中!!


男はみぞ落ちを押さえ、後退(あとづさ)りした。


グイッと振り向くと、男の胸倉を掴んで細い路地から引きずり出した。


「ちょっとアンタ、今なんて言った?!」


上目使いで思いっ切り睨んだ。


ただでさえあたしの目力半端じゃないのに、怒りに満ちた目に男は焦点が定まらない。


「べ…べつに…。」


シドロモドロに答える男。



ゴンッ!!!!!



力いっぱいビルの壁に男をぶつけた。


「尚吾とか名前言ったよな?」


冷く恐ろしい口調。


「…あっ…。」


しくじった顔をしてうつむき、口ごもってしまった。


男の胸倉を掴んだまま、上から下まで一通り男を見た。

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