スピン☆オフ

「教えてくれませんか?その大事な人。もしかしたら、あたしの探している人と知り合いかもなんです。」


すがりつく様な声。


「…教えるのは構わないけど、例え知り合いだったとしても、キミの探している人の居所は聞けないよ。」


「何でですか?」


「亡くなったんだ。」


ポツリとつぶやくと、急に悲しそうな顔になった。


今にも泣き出してしまいそうで…。



「亡くなったって…事故か何かですか?」


「…そんなんじゃない。その方が良かったかもな。」


「病気?」


「…。」


お兄さんは首を振るだけで、言葉は出てこなかった。


「じゃあ…。」


「…ごめん。これ以上は今は言えない。家で待っててくれないか?」


「わかった。」


サンドウィッチとウーロン茶の入った袋を手に取り、コンビニから出て行った。


もう霧生の手がかりが消えた。


一晩だけの甘い夢だった。


霧生に会えるかも知れない。


現実なんて、そんなに甘いものじゃないと唇を噛みしめた。






< 122 / 298 >

この作品をシェア

pagetop