スピン☆オフ
「もしかして、好きな人とかいるの?」


「べ…別に好きとか、そんなんじゃなくて…。」


慌てて否定する。


「ふ~ん。なんか怪しいなぁ。」


流すような目で、あたしを見たって本当のことなんか言えない。


「本当に、好きとかじゃなくて。ただ…。」


霧生の事をなんて説明していいか分からない。


「忘れられない人がいるって事?」


「そんな感じかな?」


「腑に落ちない言い方だね。」


「…死んじゃったかもしれないんだ…。急にいなくなっちゃって。」


ぎゅっと膝の手に力が入る。


うつむいてたまま言葉の出ない。


「名前とか書いて。」


秀はニッコリ笑いながらポンッと肩を叩いて、ベッドの横に置いてあったペンとメモを差し出した。


「なに?」


びっくりしながら顔を上げた。


「その人の名前とか、どこに住んでたとかさぁ…。」


「なんで?」


「尚吾がこのままじゃ可哀想だから。これは、オレが尚吾の為に動きたいからさ。お礼とは別件だから。」


ペンとメモを手に取ると、しばらく見つめていた。


だって霧生を調べるって事は、あたしの事もバレるって事でしょ?


そんなのダメだよ!!


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