スピン☆オフ
「…ねえ、調べてくれるのは嬉しいけど…どこまで調べるつもり?」


恐る恐る聞いてみた。


秀はあたしの話し方に何かを悟ったらしく


「大丈夫。居場所だけ探すだけだから。今日の紗羽ちゃんみたいにね。」


ニッコリと笑ってくれた。


その笑顔に安心感があったのか?


秀を信用してみようと思った。


万が一にも過去がバレてしまっても、また逃げればいいだけの話しだし。


もし、これで霧生が見つかってくれたら、それで嬉しいわけだし。


でも、今のあたしに一番必要なモノがあるのに…。


頭の中ではイロイロな事を考えながら、メモに霧生の実家とフルネームを書いた。


「これでいい?」


「十分!!結果は何とも言えないけど、生死くらいは分るはずだから。」


「ありがとう。」


「お礼は尚吾から聞くからさ。今の気持のままじゃ尚吾が可哀想だし。…居なくなった人には勝てないし。コイツが吹っ切れれば、尚吾と向き合えるだろ?」


「…。」


返事なんか出来るはずもない。


だって、あたしは人を好きになったらいけないんだから…。


「まあ、尚吾はいい奴だし、多分、紗羽ちゃんが思ってる以上にアイツはすげぇ~奴だよ。」


うなずく事も返事をする事も出来なかった。


どんなにいい人でも、あたしには人を好きになれないんだから。


沈黙したままのあたしに、それ以上何も言わなかった。


部屋のドアを開け、出て行こうとした秀の後姿に唇を噛みしめた。


「…ねぇ、あたし、秀にお願いがあるの!!」


大きな声で呼び止める。


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