スピン☆オフ
「チワワが知らなかっただけだよ。」


「なにそれ?!」


もう頭の中は真っ白。


「好きって言えない?」


霧生の唇が段々と迫ってくる。


緊張とパニック状態で体が震えてきた。


「…す…す……好き。」


うつむいて、ボソッとつぶやいた。


緊張感の張り詰めた空気に、耐えられなかった。


完全に、霧生に押された…。


霧生は無表情で目を伏せた。


そして、あたしを強く抱きしめた。


「…き……きりゅ…。」


…苦しくて声が出ない。


フッと、霧生の腕の力が抜ける。


霧生の柔かい唇が、優しくあたしの唇に触れた。


その唇から体温が伝わってくる。


こんなにも温かかったんだ…。


ぎゅっと、霧生のTシャツの襟元を掴んだ。


そっと目をつぶると、温かい雫が頬にあたり、Tシャツを掴む手の甲に落ちた。


あたし泣いてないよね?


…霧生、泣いてるの?


嬉しいからなの?


涙の意味なんて分からなかった。


あたしは、緊張と恥ずかしさでいっぱいだったから。
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