スピン☆オフ
「紗羽も彼氏が出来たのに、隠すことないだろ?」


優しく微笑んでるけど、目は笑ってない。


みんなは気づいてないみたい。


「あぁ…うん。」


言葉さえ出てこない。


まるで狼に狙われた小鹿のよう。


「キミが紗羽の彼氏の尚吾くんだね。」


立ち上がり手を差し出した瞬間


バチン!!


あたしが思わず叩き払った。


「帰ろう。尚吾。」


「…う…うん。」


周りは状況を把握出来ず、ポカンと見てるだけ。


「ごめん。俺が来たばっかりに、せっかくのランチを邪魔しちゃって。」


お兄ちゃんが謝りだした。


「気にしないで。兄妹だからって、何も言わずに呼んだ私が悪いんだし。」


「違うよ。妹の彼氏が見たかっただけで、来ちゃった俺が悪いんだから。美緒ちゃんは気にしないで。」


100%お兄ちゃんの芝居だ。


「ありがとう。」


嬉しそうな美緒達。


こうやって周りを騙していくんだ。

< 208 / 298 >

この作品をシェア

pagetop