スピン☆オフ
「紗羽。お兄ちゃんが帰るから、みんなと楽しく食事をしていきなさい。」


財布の中から5万円を出すと、テーブルに置いた。


「秋くん気にしないでよ。」


「いや。食事を台無しにしたお詫びだ。それじゃあ。」


軽くお辞儀をして、あたしの隣を横切る。


「今度は、どこに逃げるのかな?」


ボソリとつぶやきながらすれ違った。


背筋が氷つき、見えない鎖に繋がれた。


「…あたしも帰る。」


催眠術にでもかかったかのように、フラフラとお兄ちゃんの後を歩きだした。


尚吾達を知られた。


もう、逃げ場所はない。


このまま尚吾達と一緒にいたら、何をされるか分からない。


お兄ちゃんの車に乗ると、重たい沈黙。


ただ窓の外を見ていた。


高速道路の過ぎてく街灯の明かりをながめてるだけ。


逃げ出す気力もない。


考える思考回路すら働かない。


見えない鎖に、全てをガンジガラメにされてる。


これから自分がどうなるか?


わからない恐怖と不安。


尚吾達が大丈夫か心配もある。


不安に押し潰されそうで、泣き出しそうな自分が車の窓に写ってる。


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