スピン☆オフ
「嘘なんかじゃないよ。未練があったら、話さない方がいいかと思ってたから。」


あたしの顔を覗き込みながら、真剣な顔をして言った。


「そんなの…そんなの…………。」  


秀の胸元を掴むけど、顔をあげられなかった。


涙の大きさが、霧生への思いを映し出してるようで。


秀は、何も言わずに抱きしめてくれた。


「おいっ!!何してんだよ!!」


突然後ろから、尚吾の怒鳴り声がした。


「何でもないよ。」


平然に答える秀。


「何でもないわけないだろ?!」


そう怒鳴りながら、尚吾があたしの肩を掴もうとした。


「触らないで!!!!!」


大声で怒鳴った。


「………なんでだよ。唯泣いてんじゃねえかよ。」


一瞬、ひるんだ尚吾。


「ほっといてよ!!!!」


廊下に響き渡るくらいの大きな声で怒鳴った。


本当は、誰よりも尚吾に抱きしめて欲しかった。


だけど、今ここであたしは強がるしかできない。


ここで甘えてしまったら、本気で尚吾が好きで止まらなくなる。


強がって意地を張る以外、あたしの気持ちに歯止めをかけることが出来ない。


いつもの秀なら、すぐに尚吾に変わるのに。


気持ちを察してくれたかのように、あたしを抱きしめて離さなかった。


「なんなんだよ!!秀も唯も…。急に2人で消えたかと思えば、これだよ…。」


「これだよじゃねえよ。最近、尚吾おかしいぞ?!」


珍しく秀が食って掛かる。


「はぁ~?オレのどこがおかしいんだよ?」


「明らかに、唯を避けてるだろ?」


「避けてなんかいねえよ!!!」


「避けてるだろうが?!今日だって、口もきかないし。それに、ミュウって子とベッタリじゃねえかよ。」


「そんなんじゃねえって!!ただ、1人にしとけないだろ?まだ小学生なんだし。」


「それは分るけど、小学生1人を気にするヤツじゃなかっただろ?」


段々と、ヒートアップしてくる二人。

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