スピン☆オフ
「もしもし…秀?」


さっきまで泣いていたから、声がガラガラ。


「大丈夫か?」


心配そうな声。


「うん…なんか、いろいろあって、泣きすぎちゃったみたい。」


少し笑って話してみせた。


秀に、これ以上心配かけたくなくて…。



「そっか…今から会えないか?」


「……なんか、夜に秀と2人きりは、襲われそうでイヤだ。」


つい口をついて出てしまった。


「あはははは…。それだけ嫌味が言えれば大丈夫だな。」


今日、初めて秀の笑い声を聞いた。


「ごめんね。なんか人間の防衛本能が働いちゃって。」


なんて嫌味ったらしく冗談半分、本音半分。


「大丈夫だよ。唯にそんな事しないから。してほしいなら別だけど?」


「してほしくないです!!」


ハッキリ答えた。


「だったら、何もしないから安心して。」


「う~ん…そこら辺、あんまり信用ないけど。」


あきれた口調。


「ヒドくないか?」


「いや、日頃見てますから。」


「……あ~……だよな。」


言葉に詰まってる。


「そういうこと!!」


笑いながら言った。


「それだけ元気だったら大丈夫だな。」


「心配かけてごめんね…。」


「気にするな。カワイイ唯ちゃんの為ですから。」


「あぁ~、はいはい。」


みんなに同じ事を言ってるんだから。


流して聞いた。


秀のおかげで、グチャグチャだった気持ちが、落ち着いてきた。


「元気になったみたいだし、デートはおあずけかな?」


冗談言って笑ってる。


「そうだね。…ありがとう。」


笑いながらも、落ち着いた口調でゆっくりと言った。


「今日は、何も考えるな。ゆっくり寝て、明日また唯ちゃんの笑顔見せてくれよ。」


荒れ果てた心に、ス~ッと柔らかい光が射していく。


秀は、女遊びしてるだけあって、慰め方もうまいな。


なんて、ちょっと感心しちゃった。



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