スピン☆オフ
「どんな状況でも、好きじゃなかったら言えないだろ?」


「それは……ほら、クリームだらけじゃん。」


恥かしくて思い出したくないから、忘れようとしてたのに!!!


話を誤魔化して、尚吾の鼻の頭にまで付いているクリームを指で取って舐めた。


んんん?!


凄く美味しい…。


ひと舐めしただけなのに、甘くてフワフワしてる。


「そうやって…。」


尚吾が言いかけた。


「このクリーム、凄く美味しいよ!!!」


目を輝かせながら、尚吾持ってるフォークを手に取ると、ひとくちケーキを食べた。


スポンジもフワフワ。


イチゴと生クリームが絶妙に合ってる。


まるで、有名パティシエが作ったみたい。


「本当に旨いか?」


美味しそうにパクつくあたしを、ビックリしながら見てる。


「うん!!尚吾が作ったなんて思えない。」


「そうか。時間かかっただけはあるだろ?」


「もしかして、これ作ってて『G』にいなかったの?」


「うん。練習するのに、どれだけ日数かかったか。」


懐かしむような、遠い目をしている。


「ねえ、もしかして…尚吾が連絡取れなかったのって…。」


「ああ。姉ちゃん料理学校の先生だから教わってた。バレたくなくて、必死だったんだけど。色々難題言われてさ。姉ちゃんがまさか今でもオレが好きだったからとは…。」



そうだったんだ…。


やっと、全部の事が解けた。


作ってる時に、連絡来ても困るし。


お姉さんに毎日会ってるって言ったら、理由を聞かれるのは当たり前だ。


だから、ミュウにも嘘をついてたんだ。


尚吾の性格からして、徹底しないとボロを出すし。


秀もおかしいと思うわけだ。


「ねぇ、難題って?」


興味本位で聞いてみた。

「あ…うん…。」

一瞬だけ、視線を逸らしたのを見逃さなかった。

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