スピン☆オフ
「オレとキスが出来なくても?オレに抱きしめられる事がなくなっても?それが、全部ミュウのモノになってもそれを選ぶんだな?」


目を開けると、初めて今にも泣きそうな尚吾を見た。


選びたいはずなんかない。


それでも、ここで選ばなければ、突然失う事の方が怖いから。


覚悟を決めるしかない!!



………コクン。



小さくうなずいた。


そのまま顔を上げることができない。


唇を噛み締めて、声を押し殺して涙を流した。


顔は見えないけど、尚吾が泣いているのが分かった。


かすかに聞こえる押し殺した嗚咽。


あんなに嫌いだった奴なのに…。


こんなに好きになっていた。


溢れ出た思いが止まらなくて、しっかりと尚吾に抱きついた。


『これが最後だから…。』


そう言わなくても、尚吾には伝わっていた。


これからの2人の時間を埋め尽くすかのように、あたしをしっかり抱きしめて離さない。


かすかに唇が触れる感覚。


涙のこぼれた尚吾の唇が、何かを確かめるようにゆっくりと触れた。


そして、何度も何度も角度を変えてキスをする。


「……んっ……あっ」


合間で必死に酸素を吸い込みながら、もっともっと尚吾を求めた。


「あっ……」


尚吾の大きな手が、服の中に入ってきて胸を捕らえる。


息が苦しくて。


体中が芯まで熱いよ。


横たわったソファが冷たく感じる。

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