スピン☆オフ
唇を噛み締め、ギュッと目をつぶって力いっぱいドアを開けた。


背筋をピンと張り、ドアから一歩を踏み出し歩き出した。



…パタン。



ゆっくりとドアが閉まった。


振り返るなんて出来ない。


ここで頑張らなかったら、泣いて尚吾の元に戻っちゃうから。


階段を下りながら、涙を流していた。


もう、追いかけてくる事はない人を心のどこかで期待してる自分がいる。


いつもいつも、中途半端な事しか出来なくて…。


どんなに尚吾を待たせたんだろう?


あたしよりも、尚吾の方が辛いかもしれない。


何度も、追いかけて来てくれてるんじゃないかと振り返りたかった。


でも、振り返るって事は、またズルズルと引きずってしまいそう。


もう、あたしは決めたんだ!!!


尚吾にも迷わせるわけにはいかない。


『G』に戻る電車の中で、ドアにもたれしゃがみ込んで泣き続けた。


『G』に帰ってくると、秀がちょうど帰ってきた所だった。


ガクッと一気に力が抜けて、床に座り込んで泣いた。


「どうしたんだよ?!」


駆け寄ってきて、抱きしめてくれた。


あたしは、何も説明できないまま、ただひたすら泣き続けた。


秀も何も聞かないまま抱きしめていてくれた。






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