スピン☆オフ

何回もドアを叩き、ずっと霧生を呼び続けて。


段々と声なんか出なくなって。


出てくるのは涙だけ。


ドアにもたれ掛かり、泣きながら叩くドアの音。


ドアを叩く音が小さくなっていく。


腕に力が入らない…。


「…霧生………。」


振り絞るような声。


その時だった。


…ガチャッ。


鍵を開ける音がした。


ゆっくり開いたドアの中には、重たい空気と険しい表情をした霧生が立っていた。



生きてた…。



安心したのも束の間。


あたしの顔を見るなり、崩れ落ちるように抱きついてきた。


「…ごめん。…ごめん。」


霧生…泣いてるの?


震えてる体。


声を押し殺して泣いてるのが伝わってきた。


「どうしたの?…冬槻先生と何があったの?」


震える体を優しく抱きしめると、抱きついてきた霧生の腕が痛いくらいきつくなってくる。


< 59 / 298 >

この作品をシェア

pagetop