スピン☆オフ
家政婦さんは、いつも通りにしておけば何も疑わない。


問題は監視カメラ。


撮影映像は、お兄ちゃんの部屋のパソコンに録画されてる。


パソコンさえ壊れてしまえば…。


ピンとあたしの中に閃いた。


お兄ちゃんの部屋に何食わぬ顔をして侵入し、わざとパソコンに水をこぼしてやった。


水というコンピューターの大敵。


買い換えるか?


修理に出す以外、パソコンが使える事はない。


そこに目を付けてみた。


案の定、電源は入らない。


自分の部屋に戻ると急いで着替えた。


ここから脱出するには、この滑り落ちそうな屋根伝いに降りるしかない。


イチかバチかの賭けだった。


窓を開けると、久しぶりの外の匂いが部屋中に充満した。


足元を見ると、あまりの高さにクラッとしてしまう。


グネグネと歪んで、恐怖を引き立てる。


それでも、負けてなんていられなかった。


ここで1歩を踏み出せなければ、何も変わらない。


ゆっくりと、一歩ずつ確実に歩き出した。


命綱なんてない。


焦らないように、ゆっくりと…。

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