・+◇【短編】White love letter
「行ったことないって‥一度も?」
『‥うん』
「‥‥‥どうして?」
そんな私の問い掛けに
あなたはまた寂しそうに笑って答えたよね。
『病気でずっと入院してるから。』
「‥ごめん。そんなこと聞いて‥‥」
謝る私に、
あなたはまた笑って
いいよ、と言ってくれました。
『それじゃあ、俺そろそろ帰るね。』
踵を返そうとするあなたに
ほとんど反射的に私は言いました。
「待って!」
降り注ぐ桜の中、
あなたは不思議そうに振り返りました。
「名前は?」
『え?』
「名前、何ていうの?」
突然の私の言葉にあなたは少し驚いたような顔をしました。
『‥佐宮 葉月』
「ねえ葉月!また会えるかな?」
いつもなら絶対言わないような事を
私は叫んでいました。
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