・+◇【短編】White love letter
するとおばあちゃんは、私の右手に何か重たい物を乗せました。
『もう、なくさないようにね』
そう言いながらおばあちゃんは静かにほほえみました。
私の右手にあったのは、あの石でした。
「どうして?!
どうしてこの石を、あなたが持っているんですか?!!」
私は心臓が止まりそうな程驚きました。
この石は、死んでいる葉月を見た時に、あまりのショックで落としてしまったものでした。
『‥私はね、葉月君と同じ病室に入院していたのよ』
おばあちゃんは静かに言いました。
『あなたが葉月君の訃報を聞いて病室に飛び込んできた時、死んでいる葉月君を見て、あなたの手からこの石が落ちるのを見たの。』
おばあちゃんは、ひとつひとつの景色を思い出すように言いました。
『ずっと必死に病気と戦う葉月君を見ていたから、あなたを放っておけなかったの。』
「そうだったんですか‥」
おばあちゃんはまた静かにほほえむと
『また新しい季節が来るわ』と言って、
桜の花びらの舞い散る中、麗らかな春の道に消えていきました。
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