Run☆Love
「あ、えっ、あ、ごめん…なさい」
緊張してとぎれとぎれになってしまった。
「いっ、いいよ。大丈夫…あ、この前の…」
『この前の』という言葉を聞いて、
覚えていてくれたことが嬉しかった。
「は、はい!すいません!何回も…え…と…」
彼はいきなり笑い出した。
あたしがきょとん、としていると彼は
「ご・・・ごめん、つい・・・君、おもしろいね。名前なんて言うの?」
「えっ、あ、名前は中原 希衣奈です。中3です。」
「中原さんっていうんだ。俺は谷口 幸矢(たにぐち こうや)。高1
またどこかで会えるといいね。」
そう言うと、谷口先輩は笑って手を振って行ってしまった。
このあとあたしは鍵のことなんか忘れて
先輩の行った方向をみつめたまま、立ちすくんでいた。