その妖、危険につき
「やっと、目が覚めたか」
たぶん、この声は一生忘れるはずのないものだ。まぎれもなく、彼の声だ。
「な、んで…」
ここにいるのか。帰ったとばかり思っていたのに。しかも彼は昨日とはうってかわってピンピンしていて、顔色もよかった。
「帰るわけにはいかないだろ。いろいろ済んでないことがあるしな」
彼はまたにやりと笑った。
「お前は今日から俺のエサだ。なあ、ひなた」
彼はわざわざ私の耳元で囁いた。
「な、まえ、なんで…?」
「東高校二年C組木崎ひなた」
そう言って彼は私の生徒手帳を開いて見せた。