その妖、危険につき
「ねえ、じゃあ喉渇いた。水持ってきて」
「はあ、俺様を使おうってのか?」
「だって、私はあなたのせいで動けないし、私はあなたの大切な御馳走なわけでしょ? 私が健康でいることに価値があるんじゃないの?」
彼は一度眉をひそめて、無言でキッチンのほうへ消えた。冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出してコップに注ぐと戻ってきた。
飲め、と差し出しされたコップを受け取ることも体を起こすこともできない。とにかく体がつらい。
彼はそれを察したのか、私の体を起こし、そこに自らが入って私の背もたれになる。まるで彼に抱きしめられているみたいだ。