その妖、危険につき
「ほら、飲め」

半ば私の唇に押しつけるようにコップをつけて、水を飲ませてくれた。水が喉を通ると、冷たくて気持ち良かった。


「お前変わってるよ。俺が怖くないのか?」

「…だって、少なくとも二年は殺されないんでしょ。それに疲れちゃった、考えるの」

「ふうん」

彼は空になったコップを枕元の台に置くと、私の口元から垂れた水を拭った。


彼のこういうところとか、おそらくベッドに運んでくれたであろうところとか、それを考えてしまうと、とてもあやかしには見えなかった。
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