その妖、危険につき
「ねえ、そういえばあなたの怪我はどうしたの?」

「ああ? もうだいたい治った。ひなたの生気吸ったからな、治りが早い」

そのせいで私はほとんど力が入らないんですけど。


背中に感じる彼の体温は人間と少しも変わりない。あたたかくて、落ち着く。こんなぬくもりは、ずっと知らなかった。

「…あなたの名前、聞いてない」

「は? ああ、廉。雛形廉(ひながたれん)」

「あやかしにも、名字があるの?」

「俺たちの中には人間社会に紛れて生きてる奴がけっこういる。人間のふりをしていたほうがいろいろ都合がいいからな。俺も同じだ。俺なんて大学生だ。笑えるだろ」

彼の声がおかしそうに揺れる。
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