その妖、危険につき
焦る。

今すぐ走り出したいけど、だめだ。きっとそんなことをしたら相手が気づく。捕まったらどうしよう。でもこのまま歩いてどうしたら、いい?



振り返るな。振り返っちゃいけない。



頭ではわかっているのだけど、確認したくてたまらない。もしかしたら勘違いかもしれない。一抹の望みが捨てられなくて、やってしまった。


おもむろに振り返ると、いた。特徴なんて何にもない、ただのおじさん。だけど、私が振り返ると、ぴたりと足を止めてにやりと笑った。それから、いきなり走り出した。
< 30 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop