その妖、危険につき
「…落ち着いたか?」

「こんなんで落ち着けるわけな…」

「お前は何に怯えてた? あそこから離れてたかったのはあのおっさんがいたところにいたくなかったからか、それとも、嫌なものでも見えたか?」


私は驚いて顔をあげた。目の前には廉の顔があって、どぎまぎして顔を背けると、廉の手が私の顎を捕らえて、上を向かせた。廉の瞳は相変わらず真っ黒で、吸いこまれそうな気がする。


「やっぱり見えるみたいだな。人じゃないもの。人だったもの、て言ったほうが正しいか」

あの場所には、じっと佇んでいる小さな女の子がいた。暗い目をしていて誰かを恨んでいて、それがものすごく気持ち悪くて、怖かった。
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