その妖、危険につき
誰かに何かを気づいてもらえるなんてことがずっとなかったから、少し気が緩んだ。涙が出そうになって、慌てて下を向いた。なけなしの力で廉の胸を押し返して距離を取る。

廉は無理に近寄ろうとはせずに、私の頭を撫でた。その手は優しい、あやかしのくせに、どうしてこんなに優しい触り方ができるのだろう。


「あやかしのくせに…」

「慰めてやってもいいぜ」

「いらない」

揶揄するような声がかかる。慰めるなんて、何されるかわかったものじゃない。
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